慶應義塾退官記念
「最終講義」
慶應義塾退官記念
「最終講義」
慶應義塾における37年の歩み
そして新たなスタートへ

慶應義塾大学三田キャンパス
慶應義塾における37年の歩み
そして新たなスタートへ

慶應義塾大学三田キャンパス

37年にわたる私の慶應義塾における教員生活集大成となる一日に、予想をはるかに超えた多くの方々にお集まりいただき、厚く御礼申し上げます。西校舎の大ホールいっぱいに詰めかけてくださった皆様から、はかり知れない勇気と希望をいただきました。

この感動を胸に、これからまた新たなチャレンジを重ねてまいりたいと思いますので、どうか今後ともご支援ご鞭撻賜りますよう、心よりお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

1.教員生活の始まり

研究と教育を両輪として走り続けた37年間。ハーバード留学から帰国後、28歳で慶應の専任講師となり、田村ゼミをスタートしたのが1987年でした。

2.1989年「日米構造協議」を機に

研究者として様々な機会をいただきました。 1989年からの日米構造協議を機に、競争政策について研究者として政府の議論に参加。また、1995年にはWTO(世界貿易機関)が設立され、貿易政策も大きく前進した時期でした。

3.田村流教育メソッド

一方通行の授業を打破すべく、アクティブラーニングを主軸に様々な手法に挑戦。授業中にクイズを出題して携帯電話から即時に回答させるシステムの利用や、ディベートや卒業論文を課すゼミ運営等、結果として多くの優秀な卒業生を輩出したと誇りに思っています。

4.文武両道

慶應が重きを置く文武両道を、私自身もゴルフ部部長として実践することを心がけてきました。年代、性別問わず共に戦い、共に楽しめるゴルフはずっと続けていきたいと思っていますので、ぜひ機会があればお声かけください。

5.交渉学、リーダーシップ教育の歩み

ハーバードで交渉学の重要性を痛感し、日本へ持ち帰ろうと決意しました。慶應丸の内シティキャンパスから始まり、慶應大学法学部で「交渉学」、さらに全学的な寄付講座「リーダーシップ基礎」を開講、その他多くの場所で講座や研修を行い、普及に努めています。

6.学びを活かす―「実学」の世界へ

人は議論する中で多くの学びを得ることができる。福澤先生の実学の教えを実践すべく、様々なプログラムを開講。慶應150周年記念事業の福澤諭吉記念文明塾では、社会人、大学生、さらに一貫教育校4校(塾高、志木高、女子高、SFC高)に向けて実施しました。

7.リーダーシップ基礎とは

生き抜くために求められる、正解が見えない問題を乗り切る力とは、結局はロジカルなコミュニケーション力である、という境地にたどり着きました。そしてそれを、傾聴力、対話力、交渉力、説得力の4つを柱とした「リーダーシップ基礎力」として体系化するに至りました。

8.リーダーシップ基礎:傾聴力

人と話すときに、すぐに相手の意見を評価したり断定したりしていませんか。人を巻き込むには、相手の話に関心をもって質問し、相手の考えをよく知り尊重したうえで、自分の意見を表明することが大切です。このポイントは、IQAAとまとめることができます。

9.リーダーシップ基礎:対話力

話し合いや会議を、いかに効率的・効果的に行い、最善の解決策を導くことができるか。そのリーダーシップを発揮するために必要な対話力のロジックを、SPICEの5ステップにまとめました。

10.リーダーシップ基礎:交渉力

交渉は駆け引きに陥りがちです。しかし、互いの共通のミッションを見出し、より視野を広げたオプションを提示できれば、双方が納得できる合意への道が開け、その後の信頼関係につながります。交渉の事前準備のSMARTアプローチを開発しました。

11.リーダーシップ基礎:説得力

ロゴス、エトス、パトスを備える、すなわち、論理的で、人徳を備え、情熱に訴えることができれば言葉に説得力が宿って、周囲を巻き込んだリーダーシップを発揮できます。これをSRAAとしてまとめました。

12.新たなスタートへ

4月からリーダーシップのMBAである大学院大学至善館にて、ネゴシエーション&リーダーシップを英語と日本語で担当します。慶應でも、大学生向けに同様の教育を継続します。その他、学会活動や企業との連携など、より一層幅広く挑戦し、活動していきます。

13.卒業生から退官に寄せて

田村ゼミ三田15期 渕川 和彦さん(慶應義塾大学法学部准教授/経済法後任) 田村ゼミ三田6期 森林 貴彦さん(慶應義塾幼稚舎教諭/慶應義塾高校野球部監督) 田村ゼミ三田14期 末藤 梨紗子さん(田村ゼミOBG会共同会長) 司会)田村ゼミ三田12期 長田 州之介さん(田村ゼミOBG会共同会長)

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